「ー」はマイナス?引く?~プラスマイナスの混乱とその乗り越え方~
2025.06.08ブログ

皆さん、こんにちは。
学び舎エルムの岩間です。
中学1年生は、数学でプラスやマイナスの数について学んでいますね。
小学校までのプラスしかない世界から、マイナスの世界も入ってきて、これまでの感覚と違う!と、混乱することも多いのではないでしょうか?
エルムでも、中学生から、
「これはマイナスですか?引くですか?」
という質問を多く受けます。
例えば、
「ー8ー5」のような式では、「”ー”は引くじゃないの?」、「なんで足し算をするのに、結果はマイナスになるの?そもそもマイナスの足し算ってどういうこと?」
「+6ー9」では、「6から9を引けばいい」と感覚的にわかってー3にできる。
ところが、「ー9+6」になると、「プラスだから足すんだよね?」と勘違いして+15にしてしまう。
こういった混乱が、プラスマイナスの計算ができる子とできない子の違いに繋がっていきます。
「できる子」は、ある意味”考えていない”
一見スラスラ計算できている塾生でも、よく見てみると・・・
「マイナスが続いたら数字は足すって習ったから」
「なんかそういうルールだったでしょ?」
と”意味”というよりは”手順”で解いている子も少なくありません。
これは良くも悪くも「思考停止状態」。
ですが、この段階を通ること自体は悪いことではないと思っています。
「守破離」で言うなら、まずは”守”でいい
「守破離(しゅはり)」は剣道や茶道のような「型」を重んじる世界でよく出てくる言葉で、
- 守(しゅ):まずは型通りにやってみる
- 破(は):型の意味を理解して応用し始める
- 離(り):自分のやり方を確立していく
勉強もまさにこれが当てはまると思っています。
最初のうちは意味が分からなくても、型通りにやってみることは必要。
そのあとで「なぜそうなるのか?」という問いに出会い、理解が深まっていくのです。
「できない子」は、ルール以前で止まっている
一方で、計算に苦手意識のある子たちはというと・・・
- 「マイナスって何?」「引くとどう違うの?」でストップ
- 「+と-が続くと、どっち符号になるの?」が整理できない
- ただの記号の並びにしか見えない
つまり、「どうやって手をつければいいか」すらわからない状態。
これはいわば、「守破離」の”守”に入れていない状態なんです。
でも大丈夫。
こうした子どもたちに必要なのは、「とにかくやれ」ではなく、「入っていける入り口」を用意すること。
- 数直線で動きを”目で見て”意味を体験する
- 気温などの身近なたとえで、”意味のあること”としてとらえる
- 声に出して読んで、”意味ある文章”として感じる
こういった具体的な手順を通して、「あ、そういうことか!」という小さな納得が積み重なっていきます。
そして、その納得の積み重ねこそが、「まずは型通りにやってみよう」という”守”のフェーズに入っていく第一歩なのです。
「正負の計算」は混乱がつきものでつまずきやすいけれど、しっかり教えてあげれば必ず乗り越えられます。
大事なのは、「わからないのは感覚のせい」と決めつけず、その子にとっての”意味のある体験”を積み重ねること。
そして同時に、最初からすべてを理解しようとしなくてもいい。
「意味がわからなくても、まずはやってみる」という姿勢。
それを積み重ねていく中で、やがて「わかる」にたどり着ける。
このことは、実は僕自身も身をもって感じてきたことなんです。
ちょっとした余談
最後に、僕も中学校でプラスマイナスの計算を初めて習ったときは、よく理解できていなかったなぁ・・・と今でも覚えております。
中学1年生のとき、「正負のかけ算」の授業のあと、廊下に誰もいないことを確認して、
「プラプラはプラ、マイマイはプラ、プラマイはマイ、マイプラはマイ」
「プラプラはプラ、マイマイはプラ、プラマイはマイ、マイプラはマイ」
と、小さな声で必死に暗唱していた記憶があります。
勉強ができるキャラとして周りから見られていた分、その「できる」を保つために、誰にも見られていないところで必死だったんです。
当時は、それを知られるのが恥ずかしくて、当然そんな姿は誰にも見せませんでした。
でも今になって思うのは――
「勉強ができる子」って、何も努力せずに”わかっちゃう子”ばかりではないということ。
むしろ、”できるようになるまで工夫してきた子”なんだと思います。
だからこそ、つまずいている子たちに伝えたいのは、
「今、よくわからないのはあなただけじゃないよ」
「”できるようになる”って、小さな努力の積み重ねなんだよ」
というメッセージです。
こんなちょっとした思い出話が、保護者の方や子どもたちにとって、ほんの少しでも勇気や希望になってくれたら嬉しいです。